「オーダーメイド」のPEEP

2020年01月31日

この研究ではPEEP 18.5 cmH2Oの時、術中のP/F比が最も高かった

Introduction

全身麻酔は無気肺や機能的残気量の低下、ひいては酸素化の悪化をもたらすが、その影響は肥満患者で著明である。経験的に(根拠なしに?)設定することが多いPEEP (Positive end-expiratory pressure)だが、「オーダーメイド」のPEEPで管理するとその影響を緩和できるのではないか、としている。

Methods

対象はBMI 35以上の待機的な腹腔鏡下手術を受ける患者

EIT: Electric impedance tomography(肺の電気インピーダンスの分布を可視化して局所的な換気状態を評価 右図参照)を用いて最適と思われるPEEPを導出し、そのPEEPで管理した群 (PEEPIND) と、5 cm H2Oの一般的なPEEPで管理した群 (PEEP5) で比較

主要評価項目はP/F比

Results

EITの図を見るとPEEP 14からPEEP 18あたりが最も呼吸の効率がよさそう。この論文では18.5cmH2Oが最適なPEEPとのことであった。つまりPEEPINDは18.5cmH2O。

PEEPINDの方が術中のP/F比は高くなっているまた、術中の機能的残気量や1回換気量といったパラメータもPEEPINDで良い結果となっている。

しかし、抜管後はP/F比、その他のパラメータ共にPEEP5との差がなくなっている。

麻酔科医にとって重要なのは抜管後の呼吸状態。これでは意味がない気がする。

Conclusion

以上の結果から、PEEPをEITで導出すると術中の呼吸状態は改善するが、術後にはその効果は消失していた、という何とも言えない結論となっている。

ただ、この研究はBMIが35以上というかなり極端な設定となっている。もしかしたら健常者だとEITで導出したPEEPが有用かもしれない。

また、「PEEPINDでは輸液量と循環作動薬の使用量が多かった」という記載がある。このレベルの高いPEEPだと、循環への影響もかなり高いようである。