肥満と気腹と頭低位
2020年02月01日
肥満・気腹・頭低位で呼吸状態が心配、というのはよくあるシチュエーションだと思う
肥満患者の機能的残気量
肥満患者では、腹部や胸郭の脂肪によって胸腔が圧迫されるが、横隔膜と内肋間筋の収縮によって胸腔の容積を保っている。そのため、機能的残気量が保たれる。
全身麻酔がかかり骨格筋が弛緩すると、横隔膜や内肋間筋も弛緩し機能的残気量が減少する。BMIが40以上の場合、機能的残気量は半分程度に。
気腹および頭低位となると横隔膜が挙上してさらに機能的残気量が減少する。機能的残気量がClosing capasityを下回ると肺内シャント(無気肺)が増加し酸素化が悪化する。
気腹・頭低位が呼吸器系にもたらすその他の影響
気腹により肺コンプライアンスが低下すると、気道内圧が上昇しBarotraumaのリスクがある。
気腹と頭低位による気管の頭側への偏位のため、気管支挿管のリスクがある。
頭低位になると頸部の静脈圧が上昇し、喉頭浮腫のリスクがある。
人工呼吸器の設定はどうするか
1回換気量 6~8 ml/kg (Ideal body weight) の従量式換気とし、PEEPは5~10 cmH2Oからスタート。
気腹および頭低位となった後、Driving pressureが15 cmH2O以下となるようにPEEPを上げていく。
PEEPを上げていってDriving pressureの最低値を探る、という方法はいつか他の論文でも見た。その論文には、呼吸10サイクルごとにPEEPを1 cmH2Oずつ上げていく、という上げ方をしていた。
*この記事はAnesthetic concerns for robotic-assisted laparoscopic radical prostatectomyという論文も参考にしています