リクルートメント手技による1回拍出量の変化
リクルートメント手技による1回拍出量の変化が輸液反応性を予測しえた
Summary
⊿SV-LRM(下記参照)という指標を提案し、⊿SV-LRMが輸液反応性を予測できるか検討している。
⊿SV-LRMは陽圧換気による静脈還流量の低下をとらえたもので、SVVやPPVとよく似た指標といえる。
LRM : リクルートメント手技 Lung recruitment maneuver, SV: 1回拍出量 Stroke volume, ⊿SV-LRM:LRMによるSVの変化率, SVV:Stroke volume variation, PPV:Pulse pressure variation
Introduction
頻脈、低血圧、尿量低下、中心静脈圧、肺動脈楔入圧といった静的指標は輸液反応性とあまり相関しないとする報告が散見される。一方、SVVやPPVといった動的指標は輸液反応性とよく相関するとされている。
ただ、呼吸器設定によって気道内圧、ひいては胸腔内圧の変化のしかたは異なるため、SVVやPPVは呼吸器設定の影響を受ける。特にVT < 8 ml/kgもしくはDriving pressure < 20 cmH2Oでは、胸腔内圧が循環系に与える影響が少ないため、SVVやPPVの信頼性は低くなるとされている。
LRMは圧・時間ともに一定の条件で、高い胸腔内圧を保つことができるため、LRMによる循環動態の変化をとらえるとより正確に輸液反応性の評価ができるのではないか。
Methods
呼吸器設定
Volume controlled ventilation VT 6-8 ml/kg (標準体重)、Positive end-expiratory pressure 5 cmH2O 呼気終末二酸化炭素分圧 30-35 mmHg、酸素飽和度 > 96%を保つ
各語句の定義
LRM : 気道内圧30cmH2Oを30秒間
VE : 250 mlの生理食塩水を10分間で輸液(1分間に25 ml、滴下数にすると1秒間に8滴の計算になる。手押しが必要か)
輸液反応性あり : VEでSVが10%以上上昇した場合
Results
対象となった28例のうち、16例 (57%) に輸液反応性が認められた。
⊿SV-LRMは感度88%、特異度 92%の精度で輸液反応性を予測した。
PPVは感度69%、特異度75%の精度にとどまった。
⊿SAP-LRMおよび⊿PP-LRMは輸液反応性を予測できなかった。
⊿SV-LRM : LRMによるSVの変化率、⊿SAP-LRM : LRMによるSAPの変化率、⊿PP-LRM : LRMによるPPの変化率
また、Gray zone approachという手法を用いると、⊿SV-LRMは64%の範囲で輸液反応性の有無をほぼ確実に判別できるのに対して、PPVは39%の範囲でしか輸液反応性の有無を判別できないことがわかる。
Conclusion
⊿SV-LRMは、PPVよりも高い精度で輸液反応性を予測できることを示唆する。
Personal View
SVVやPPVと違い、気道内圧が全く同じ条件で循環動態を比較できるのでより妥当性の高い結果となったか。
Hypovolemiaが疑われる症例では昇圧薬をよく使うが?
⊿SV-LRMとSVVを比較するとどうか?
そもそもHypovolemiaが疑われるような循環動態の不安定な患者が30秒・30 cmH2OのLRMに耐えうるか。